阿波おどり114万人に学ぶ――2027年、まつりつくばは次のステージへ

徳島市で2026年8月に開催された阿波おどりの人出が、5日間で114万人に達したと報じられました。3年連続の100万人超えです。

2026年は、人気アニメ『鬼滅の刃』と連携した「鬼滅連」も登場。作品に出演する声優やキャラクターが参加し、伝統文化と現代の人気コンテンツを組み合わせた取り組みが大きな注目を集めました。

一方、つくば市でも8月22日、23日の2日間、「まつりつくば2026」が開催されました。

巨大ねぶた、万灯神輿、演奏やダンス、大道芸、グルメなど、多彩な催しが展開され、つくば駅周辺は大勢の来場者でにぎわいました。特に、明かりをともした巨大ねぶたと万灯神輿が大通りを進む光景は圧巻です。

阿波おどりとまつりつくばを、単純に優劣で比較することはできません。歴史、開催期間、会場構成、来場者数の推計方法などが異なるからです。

しかし、阿波おどりが全国から人を呼ぶ仕組みを考えることは、まつりつくばの可能性を考えるうえで、大いに参考になるのではないでしょうか。

実は、まつりつくばも高い集客力を持っている

まず、両市の人口と祭りの規模を比べてみます。

項目徳島市・阿波おどりつくば市・まつりつくば
市の人口約24.1万人約27.1万人
開催期間5日間2日間
直近の来場規模114万人例年40万人超、2025年は約48万人と紹介
1日当たりの単純平均約22.8万人約20万~24万人
東京からのアクセス飛行機・鉄道・高速バスなど秋葉原からTXで最速45分

来場者数は延べ人数であり、イベントによって集計方法も異なるため、数字はあくまで規模感を捉えるための参考です。

それでも、1日当たりで見ると、まつりつくばも阿波おどりに匹敵する規模の人を集めていることが分かります。

つくば市の人口約27万人に対し、2日間で40万人を超える人が集まるのですから、まつりつくばは、すでに茨城県を代表する大規模イベントの一つです。

したがって、課題を「人が集まっていない」と捉える必要はありません。

むしろ考えたいのは、これだけの集客力を、つくばの魅力発信、市内での滞在、地域の店舗や企業との接点に、さらにどうつなげていくかです。

阿波おどりの強さは「一つの世界観」にある

阿波おどりには400年以上の歴史があり、踊りそのものが徳島を代表する観光資源になっています。

有料・無料の演舞場、屋内公演、街中での踊り、誰でも参加しやすい仕組みなどが組み合わされ、開催期間中は街全体が阿波おどりの世界に包まれます。

観光客にとっても、訪れる目的が明確です。

「本場の阿波おどりを見たい」

「街全体の熱気を体験したい」

「自分も踊りに参加してみたい」

こうした分かりやすい動機が、徳島市の人口を大きく上回る来場者を全国から呼び込んでいます。

2026年の『鬼滅の刃』との連携も、単に人気作品を招いたというだけではありません。徳島市にスタジオを持つ制作会社ufotableとのつながりを生かし、地域文化と現代コンテンツを自然な形で結びつけています。

伝統を守りながら、新しい世代が祭りを知る入口を増やした点に、大きな意味があります。

まつりつくばの魅力は「多様性」

これに対して、まつりつくばは複合型の都市イベントです。

巨大ねぶたや万灯神輿の大パレード、ステージでの演奏やダンス、アートタウン、各種体験企画、グルメなど、多彩な楽しみがつくば駅周辺に集まります。

公式に掲げられているコンセプトは、次のようなものです。

「自然・歴史・科学があふれる国際都市つくばで、まちとひとが一体となって未来をつくる、それが『まつりつくば』。」

これは、つくばという街の性格をよく表しています。

多様性は、まつりつくばの大きな魅力です。その一方で、市外の人に対して、「つくばまで行って体験したいもの」を、さらに分かりやすく発信する余地もありそうです。

2027年、まつりつくばは9月下旬へ

まつりつくばは2027年から、開催時期を8月下旬から9月下旬へ変更します。

公式サイトによれば、2027年の開催予定日は9月25日(土)と26日(日)。近年の気温状況を考慮し、熱中症の発症リスクを低減するための変更です。

夏祭りとして親しまれてきた歴史があるため、開催時期の変更には、さまざまな意見があるでしょう。

しかし、来場者、出演者、スタッフ、ボランティアなどの安全を最優先にした今回の判断は、持続可能な祭りにしていくために必要な決断だと思います。

そして、単に開催月を一つ後ろへずらすだけでなく、これを契機に祭りの魅力をさらに高めることができれば、2027年はまつりつくばの新しい転換点になるかもしれません。

9月の祝日を生かした「まつりつくばウィーク」

2027年9月後半のカレンダーを見ると、興味深い並びになっています。

日付曜日内容
9月18日土週末
9月19日日週末
9月20日月敬老の日
9月21日・22日火・水平日
9月23日木秋分の日
9月24日金平日
9月25日土まつりつくば
9月26日日まつりつくば

2027年は大型のシルバーウィークにはなりませんが、18日から20日までの3連休、23日の秋分の日、25日・26日のまつりつくばが近接しています。

この期間を緩やかに「まつりつくばウィーク」あるいは「つくば未来ウィーク」と位置づけてはどうでしょうか。

もちろん、まつりつくば大会本部が長期間にわたってイベントを直接運営するという意味ではありません。現在でも、これほど大規模な祭りを安全に運営する関係者の負担は、相当なものと考えられるからです。

市内の研究機関、大学、企業、商業施設、飲食店、ホテル、地域団体などが、それぞれの場所で関連企画を実施し、最後の2日間にメインイベントを迎える分散型の展開です。

例えば、次のような企画が考えられます。

  • 研究機関や企業による特別公開、サイエンス体験
  • ねぶたや万灯神輿の制作現場・舞台裏の公開
  • 市内飲食店による期間限定の「まつりつくばメニュー」
  • 筑波山、研究施設、文化施設を結ぶデジタルスタンプラリー
  • 市内ホテルと飲食店、観光施設を組み合わせた滞在プラン
  • 外国人研究者や留学生が参加する国際文化プログラム
  • 商業施設での小型ねぶたや過去の祭りの写真展示

メイン会場だけに人を集中させず、市内各所へ人の流れを広げることができます。

敬老の日を「つくばの知」を受け継ぐ機会に

9月20日の敬老の日が近いことも、つくばらしい企画につなげられそうです。

つくばには、日本の科学技術や研究学園都市の発展を支えてきた研究者、技術者、企業関係者、地域住民が数多くいます。

そうした人々から子どもや若い世代へ、研究の面白さ、過去の挑戦、つくばの街の歴史などを伝える機会を設けることが考えられます。

「未来」を考えるために、これまで地域を築いてきた人々の経験を受け継ぐ。

これは、単なる敬老イベントではなく、科学の街・つくばならではの世代間交流になるでしょう。

9月下旬だからこそ「光の祭り」へ

9月下旬は8月下旬より日没が早くなります。

これはイベントの時間に制約を与える一方で、巨大ねぶたや万灯神輿の光を、より早い時間帯から楽しめるという利点にもなります。

小さな子どもを連れた家族や高齢者も、遅い時間まで待たずに、明かりをともしたねぶたを見ることができます。

さらに、つくばの研究機関や企業が持つ技術を生かして、光、映像、音、ロボットなどを組み合わせれば、「科学の街・つくばの光の祭り」という新しいイメージをつくることもできるでしょう。

まつりつくばでは、2013年に宇宙とロボットをテーマとしたイベント、2018年には国内初となる車道でのモビリティロボットのパレードも行われています。

したがって、科学技術と祭りの融合は、決して唐突な提案ではありません。これまでの取り組みを、さらに発展させる方向です。

つくばと親和性の高いコンテンツとの連携

阿波おどりと『鬼滅の刃』の連携から学べるのは、有名作品を呼べばよいということではありません。

重要なのは、その地域の文化や産業と親和性のある相手と組み、新しい来訪者が地域を知る入口をつくることです。

つくばであれば、宇宙、ロボット、AI、生命科学、未来都市、環境、国際交流などをテーマとする作品やクリエイター、企業との連携が考えられます。

例えば、科学や宇宙に関心を持つ子どもたちが、祭りを入口としてつくばを訪れ、研究施設や筑波山にも足を延ばす。その体験が、つくばへの継続的な関心につながっていく。

話題性だけを追うのではなく、「つくばらしさを強くする連携先」を選ぶことが重要です。

「見る祭り」から「参加する祭り」へ

阿波おどりの大きな強みの一つは、観客と踊り手の境界が比較的低いことです。

まつりつくばでも、来場者が祭りを「見る」だけでなく、自分も何らかの形で参加できる機会を、さらに増やせるのではないでしょうか。

事前練習を受けた市民が参加できるパレード、子どもたちによる小型ねぶたづくり、外国人研究者や留学生による国際チーム、企業や研究機関が参加する未来型の演目などが考えられます。

「見に行った」という経験よりも、「自分も祭りをつくった」という経験の方が、地域への愛着や翌年の再参加につながります。

これは、まつりつくばが掲げる「わたしたちのまつりつくば」というキャッチフレーズにも合致します。

人出だけでなく、滞在時間と地域への波及を見る

9月下旬への移行により、猛暑による日中の来場控えが緩和されれば、これまでより長く会場に滞在する人が増える可能性があります。

子どもや高齢者が参加しやすくなり、ステージ、飲食、買い物、体験企画などを、ゆっくり楽しめるようになるかもしれません。

そのため、今後は来場者数だけでなく、次のような指標も測定してはどうでしょうか。

  • 来場者の平均滞在時間
  • 市外・県外からの来訪者の割合
  • 飲食店や小売店などでの市内消費
  • 市内宿泊者数
  • 体験プログラムへの参加率
  • 来場者の満足度と再訪意向
  • 市内の別の場所を訪れた人の割合

来場者数が同じでも、市内で過ごす時間が長くなり、地域との接点が増えれば、祭りが生み出す価値は大きくなります。

一方、9月下旬にも暑い日はあり、台風や秋雨の可能性もあります。時期を変えるだけで天候リスクがなくなるわけではありません。暑さ、雨、風の複数のリスクを想定した運営は、引き続き重要です。

2027年、まつりつくばはどう変わるだろうか

2027年のまつりつくばでは、これまでより早い時間から来場する家族が増えるかもしれません。

夕暮れが早くなるため、ねぶたや万灯神輿の明かりを楽しめる時間帯も変わります。気候が穏やかであれば、飲食や体験企画への参加が増え、市内での滞在時間が長くなることも期待できます。

さらに、敬老の日と秋分の日を含む前週から、研究機関、大学、企業、商業施設、飲食店がそれぞれ関連企画を展開すれば、祭りの効果をメイン会場の外へ、そして2日間の前後へ広げることができます。

2027年は、「真夏の2日間のイベント」から「秋のつくばを代表する都市文化イベント」へ、まつりつくばが新しい一歩を踏み出す年になるかもしれません。

すでに大きな力があるからこそ、次のステージへ

まつりつくばは、多くの市民、出演者、関係団体、企業、スポンサー、行政、ボランティアによって、40年以上にわたって育てられてきました。

巨大ねぶたと万灯神輿がつくばの大通りを進む光景は、すでにこの街を代表する風景です。

阿波おどりの114万人という数字から見えてくるのは、まつりつくばに何かが足りないということではありません。

むしろ、まつりつくばには、1日当たりで見れば全国有数の祭りに匹敵する人を集める力が、すでにあるということです。

その力に、「科学」「未来」「国際性」「光」というつくば独自の物語を重ねていく。

観客を参加者へ、2日間の来場を市内での滞在へ、祭りの盛り上がりを地域との継続的な関係へつなげていく。

安全を重視して開催時期を変更する2027年は、まつりつくばが「つくばでしか体験できない祭り」として、さらに大きく育っていく出発点になるのではないでしょうか。


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